SHIRASU
シラスの自然人造石に包まれた洞窟のような家
住人は、高温多湿な南九州の気候の中でも、エネルギーに頼らず、環境とつながりをもつエコロジーな暮らしを望んでいた。
土地の風を感じ、雨水を貯め、土いじりを楽しむ。そんな土着な生活だ。敷地は鹿児島市中心市街地から程近いシラス台地の上に広がる住宅地。そこでこの台地を形成する土、シラスを基にしてつくられたシラスブロックによる土着な家を考えた。
シラスは耐火性・断熱性・調湿性・蓄熱性・軽量など他の地質にはない多くの特性をもっている。市内で普及し始めていた舗装用シラス平板ブロックの加圧成型技術を生かし、初めてシラスの建築用ブロックとの製作を試みた。外壁ブロックは、材料強度を確保するためシラスの配合を変え、内壁ブロックには吸放湿性を高めるためシラス原石を象嵌した。このシラスの性質は、同時にブロックに積層した記憶の表情として表れている。外周全体を内外中空層二重壁に積み上げた家はシラスの洞窟のような土に包まれた空間となった。
この内外中空層二重壁が内部への熱負荷を軽減している。さらに内壁ブロックは仕上げのまま、家のどの部屋にも取り囲み、室内の湿度を調整している。よって内部は夏はひんやりと涼しく、冬は暖かく年間を通して安定した温熱環境となっている。台地に蓄積された地下資源のエネルギー性能をブロックへ再生することで、環境循環型の新しい空間を提案した。
作品名
SHIRASU
建築面積
88.0 m²
所在地
鹿児島県鹿児島市
延床面積
143.9 m²
主要用途
個人住宅
最高高さ
6.4 m
規模/構造
鉄骨造/地上2階
設計
ARAY Architecture
敷地面積
228.9 ㎡
構造
tmsd萬田隆構造設計事務所
写真
阿野 太一